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  ニーナの部屋はカーテンが閉め切られ、薄暗くなっていた。ティアに導かれ
て部屋に入りはしたものの、その薄暗さが象徴するニーナの心の深い憂いに、
ウォルスは刹那、声をかける事にためらいを覚える。
 みゃうん?
 肩の上のティアが、どうしたの? と言う感じで声を上げる。ウォルスは何
でもない、という思いを込めてその頭を撫で、ベッドに腰掛けて俯いているニ
ーナに声をかけた。
「……何か、用か?」
「え……あ、ごめんなさい……」
 声をかけてからニーナが反応するまで、しばしの空白があった。ニーナは目
元を拭ってから、ゆっくりと顔を上げる。
「ごめんなさい……呼び出しておいて、私ったら……」
「別に構わない。それで、どうかしたのか?」
「ええ……あの、もう少し、こっちに来てくれる?」
「……何だ? 今更ながら、親の仇でも討つつもりか?」
 冗談めかした言葉に、ニーナはやや気色ばんだようだった。
「別に、そんなんじゃないわ! もう……貴方って人は、意地が悪すぎる! 
こんな時にそんな冗談……言わなくても……」
 言っている内に抑えが効かなくなったらしく、ニーナは唇を噛みしめて俯い
てしまう。その姿にウォルスは今の軽口を後悔していた。
「済まん……確かに今のは、質が悪すぎたな」
 低く謝罪するが返事はなく、ウォルスはため息をついて部屋の中央まで進ん
だ。
「それで、どうかしたのか? オレに、何か用があったんだろ?」
 努めて静かな口調で問うと、ニーナは一つ頷いて顔を上げた。ずっと泣いて
いたらしく、顔に涙の跡がはっきりと残っていた。
「どうしても、聞きたい事があって……答えてくれるかしら?」
「答えられる事ならな」
 言いつつ、ウォルスは手近な椅子に腰を下ろす。ニーナはありがとう、と言
って、一つ息をついた。
「……それじゃ、聞きたいのだけど……お父様が、最後に呼んでいたのは……」
「ああ……オレの、母親の名前だ」
「そう……そうなの……結局……私の母様は、ずっと片思いだったのね……」
「……え?」
 思わぬ言葉に、ウォルスは微かに眉を寄せた。
「……お父様が母様に冷たかったのは、貴方のお母様を愛していたから……結
局、母様の想いはお父様には届いてはいなかった……」
「それはどうだかな。もう、当事者はこの世にはいない……真実は、誰にもわ
からんさ」
 独り言のような呟きに、ウォルスはやや素っ気なくこんな事を言う。それに、
ニーナは小声でそうね、と呟いた。
「……私……ずっと、お父様を許せなかった。一生懸命尽くしている母様に冷
たくするお父様が、大っ嫌いだったの。だって、せっかく生まれたカールまで、
取り上げるんですもの……そのせいで……母様の心は、壊れてしまった……」
 微かに震える声で、ニーナは自分の心情を語り始めた。ウォルスは何も言わ
ずに、その話に耳を傾ける。
「……母様にはもう、現実は見えないの。人形を育てるのに夢中で……私の事
もわからなくなってる。私は、そんな母様を見るのが辛かった……だから、巫
女になろうって思ったの。十歳にもならない内から、凄い恋愛不信にかかって
て、絶対、恋なんかするもんかって……ずっと想ってたのに報われなかった、
母様みたいにはなりたくないって……。
 でも、そんな時、神殿に姫様がいらしてね。私の事、とっても労って下さっ
た……それが嬉しくて、私、巫女から神聖騎士を目指す方向に転換したの。姫
様が下さった優しさに、少しでも報いたいからって……」
「…………」
「護衛に抜擢されて、チェスター殿との事を知って……それからは、姫様が幸
福になれるようにって、そればっかり考えてたわ。自分はどうせ誰も好きにな
んかならないんだから、姫様は幸福な恋をできるようにって……。
 それで……その気持ちは、絶対変わらないはずだった……変えるつもりなん
てなかったのよ。なのに……気がついたら、あの時……貴方と、庭で話をした
時から……私、貴方に惹かれてた。最初はわからなかったけど……ここの庭で、
貴方に抱き締められた時……それが、わかったの……」
 ここでニーナは言葉を切り、深いため息を一つついた。
「……なのに……どうしてなのかしらね……異母兄妹だなんて……酷すぎるわ
よ……」
 言葉と共に涙の雫がこぼれ落ちる。その涙に、ウォルスの肩の上でニーナを
見つめていたティアがみゅう……と切なげな声を上げた。
「……ごめんなさいね、おかしな話をして。こんな事言ったって困るでしょ?
私って、可愛げのかけらもない……男の人が好むタイプの女じゃないものね。
どうせ……口うるさい女としか、見てないんでしょう?」
「まあ、第一印象は劣悪だったな。過剰防衛だわ、口うるさいわで」
 自嘲を込めた問いに、ウォルスは淡々とこんな言葉を返していた。この言葉
に、ニーナはそうでしょうね、と呟いて目を伏せる。
「それでも……お前には驚かされた。何せ、こいつが……この人見知りしかし
ないティアが、お前には初対面で心を許してたからな。正直、あの時は驚いた」
「……え?」
 突然の言葉に、ニーナは不思議そうな声を上げてウォルスを見た。
「思い出したんだよな……一族を出て、平原を離れる時、オレの占術の師匠が
言っていた、奇妙な言葉をさ……」
「貴方の、お師匠様の言葉……って?」
「もし、オレに運命を共にする女がいるとすれば、それはティアがすぐに懐く
女だってな。
 人見知りの権化みたいなカーバンクルが、すぐに懐く女なんているはずない
と思って、ずっと忘れていたんだが……あの時……当たり前の顔してティアと
一緒にいたお前を見て、鮮烈に思い出したよ、その言葉を……」
 言いつつウォルスはゆっくりと立ち上がり、ニーナは戸惑いを込めてその背
を見つめた。
「あの……」
「異母兄妹って言うと、因果な響きがあるが……オレたちに関しては、それは
成立しない。どんな事情があったにしろ、オレはガレス・ハイルバーグという
男を、自分の父親として認めてはいない……オレに父親があるとすれば、それ
はパルシェの大地……それ以外には、あり得ない」
「……ウォルス……」
「……少しは、気が楽になったか?」
「え……ええ……まあ……」
「そうか、なら、もう大丈夫だな……」
「え?」
 短い言葉に、ニーナは困惑した声を上げて瞬いた。
「そんなに思い詰めるな。お前の想いは、何者も否定しない……それより、も
う少し前向きにこれからを考えろ……じゃあな」
 戸惑うニーナに素っ気なくこう告げると、ウォルスは部屋を出ようとする。
一瞬の逡巡を経てニーナはばっと立ち上がり、背中から抱きつく事でウォルス
を引き止めた。
「……まだ、何かあるのか?」
「まだ……聞きたい事が残ってる……」
「……何だ?」
 何を問おうとしているのかは薄々感じられるものの、ウォルスは静かにこう
問いかけた。
「貴方は……今の貴方は……私を……どう、思っているのか……聞かせて……」
「……聞いて、どうするんだ?」
「……それによって、決めたいの。これから、どうするか……だから……本当
の事を教えて……お願い……」
 言葉と共に、ニーナは両腕に力を込めた。ウォルスは肩ごしにニーナを振り
返り、やれやれ、と言う感じのため息をつく。
 みゃう……
 状況に困惑したのか、ティアが不安げな声を上げた。ウォルスはティアに軽
く笑いかけると、身体に回されたニーナの手をそっと外してそちらに向き直っ
た。合わせるように、ティアがすとん、とマントのフードの中へと滑り込む。
「……ウォルス……」
「……オレは、ここに立ち止まる事はできない。だから……人と、想いを紡ぎ
合うつもりはなかった……いや、元々、誰とも深い関わりを持つ気はなかった。
だから……切り捨てるつもりだった」
 不安げに見つめるニーナにウォルスは静かにこんな事を言う。突然の言葉に、
ニーナは不思議そうに首を傾げた。
「切り捨てるって……何を?」
「今、お前が問いかけた事への、答えを……だが、どうやらそれはできないら
しい……」
「……え……あ、」
 静かな言葉の直後に、ウォルスはニーナを抱き締め、唇を奪っていた。突然
の事にニーナの身体が一瞬大きく震えるが、それは徐々に静まって行く。

「……平和じゃのう、ラフィアンや」
「ええ、まったくです」
 ちょうどその頃、老魔導師と彼に仕える青年は、何故か湯飲み茶碗で緑茶を
啜りつつ、長閑な事を語り合っていた……。

 それから三日が過ぎ、ファリアの体調も万全に整った所で、ランディ、ファ
リア、ウォルスの三人は旅立つ事となった。旅の荷物は以前にラフィアンが回
収してくれていたので何ら問題はなく、三人は唯一不足していた食料だけを補
充して、旅の支度を整えた。
 チェスターたちは離宮の修復が完成するまでは、ここに身を寄せているつも
りだと言う。そしてニーナもまた、それまではここにいると言って、屋敷に残
っていた。
「それじゃ、アーヴェルド様、本当にお世話になりました!」
 旅立ちの朝、ランディは見送りに出たアーヴェルドに対し、深々と頭を下げ
て礼をした。それに、アーヴェルドはいやいや、と言って微笑って見せる。
「ランディ、元気でな」
 顔を上げたランディにチェスターが短く声をかけ、ランディはうん、と頷い
て応えた。
「……本当にありがとう、ランディ。貴方のおかげで、私……」
 続けてディアーヌが口を開くが、言葉にしきれない思いがそれ以上続ける事
を阻んでしまう。しかし、その言わんとする所は、言葉に出すまでもなく伝わ
っていた。
「……ぼくは、何もしていませんよ。どうかお幸福に、ディアーヌ様」
 にっこり微笑ってこう言うと、ディアーヌも微笑みながらええ、と頷いた。
「それでね、ランディ……私、色々とお礼を考えたのだけど……」
「え……お礼って……そんな、お気遣い無く! ぼくは、別に、そんなつもり
じゃ……」
「わかっているわ。わかっているからこそ、これを受け取ってほしいの……」
 言いつつディアーヌはラフィアンを振り返り、青年は一つ頷いて前に進み出
る。ラフィアンは腕に、革袋を抱えていた。その独特の形に、ランディはえ!?
と声を上げる。
「ディアーヌ様これ……もしかして、あの竪琴……ですか?」
 戸惑いながら問うと、ディアーヌはええ、と頷いた。
「私は、あまり竪琴は弾かないし……貴方に使ってもらった方が、この竪琴の
ためにもなると思うの……ね、受け取ってちょうだい?」
 にっこりと微笑ってこう言われては、どうにも逆らえない。それにこの竪琴
とは相性がいいらしく、とてもしっくり手に馴染むのである。譲ってもらえる
なら、それはそれで願ったり叶ったりと言えた。
「わかりました……ありがたく、頂戴致します……大切にしますね!」
 にっこり微笑って竪琴を受け取ると、ディアーヌも嬉しそうに微笑んだ。そ
して、王女はランディの傍らのファリアの目を向ける。
「ファリアさんもお元気で……貴女と一緒にいる間、とっても楽しく過ごせま
した……ありがとう」
「え……そんなぁ……それは、あたしも同じです。とっても、楽しかったです、
王女様!」
 にっこり笑って答えると、ディアーヌは一つ頷いてそれに答えた。
「ファリア様、どうかお気をつけて」
 次にラフィアンが静かにこう告げる。これにも、ファリアはうん、と頷いた。
「ラフィアンも、元気でね……」
「はい」
「……ファリアや、これを持って行きなさい」
 不意に、アーヴェルドが表情を引き締め、持っていた杖をファリアに差し出
した。差し出された杖に、ファリアははっと息を飲む。
「……お師様……これって、あの、魔導王の杖……ですよね?」
 恐々問うと、アーヴェルドはうむ、と頷いた。
「お前の力の高まりは、この杖の力を使うに十分に足ると言えるはず……持っ
て行きなさい……」
「は、はいっ!」
 静かな言葉に、ファリアはやや上擦った声で答え、銀色に輝く杖を受け取っ
た。
「……ところで……ウォルスの奴は、挨拶をせんのか?」
 ファリアに杖を渡したアーヴェルドは、一人、離れた所で門柱に寄りかかる
ウォルスを見やってランディに問いかけた。
「ええ……湿っぽくなるのは嫌だって言って……それに、言うべき事は言って
ある……とか、言ってましたけど……」
 問いに答えつつニーナを見ると、ニーナは全て心得ている、と言った面持ち
で一つ頷いた。表情からはすっかり険が消え、浮かべる笑みもぐっと女らしく
なっている。
「やれやれ、では、名残はつきんが、そろそろお別れじゃの」
「ええ……本当にありがとうございました……皆さん、お元気で! それじゃ、
また!」
 アーヴェルドの言葉に頷くと、ランディは元気一杯にこう言って走り出した。
一歩遅れてファリアがそれに続く。
「……挨拶は済んだのか?」
 やって来たランディに、門柱に寄りかかっていたウォルスが素っ気なく問い
かけて来る。ランディがうん、と頷くと、ウォルスはそうか、と呟いて門柱か
ら離れた。
「でも、何で挨拶しなかったの?」
 歩き始めてすぐ、ファリアがウォルスに問いかけるが、
「紡がれる時において、出会いと別れは必然。無意味に盛り上がる事か」
 ウォルスは素っ気なくこう受け流してしまう。ファリアはむう、と頬を膨ら
ませると、再び問いを投げかけた。
「でもぉ……ニーナさんとぐらい、何か話したって……」
「問題ない、昨夜の内に済ませている」
「……あ、そ」
 何処までもそっけない物言いに、ファリアは追求を断念して口を噤む。その
様子にやれやれ、とため息をつきつつ、ウォルスはふと、昨夜ニーナと交わし
た言葉を思い出していた。ニーナは翌朝に迫った別れの時に泣き崩れる事もな
く、むしろ気丈にこう言っていた。

「……自分でそうなる事を選んだんだから、泣いたりしないわよ。でも……こ
れだけは、覚えておいて……」
 突然の事に何を? と問い返すと、ニーナは甘えるように身を寄せつつ、静
かに言った。
「私、絶対、泣き寝入りはしないから……絶対に、待つだけの女には、なりた
くないの。だから……姫様たちが落ちついて、私自身の気持ちの整理がついた
ら……貴方を追いかけて行くわ」
「何処に行くのか、全くわからんのにか?」
「それでも、絶対に追いかけて行く……私、状況には負けたくないの。状況に
負けると、母様の二の舞だから……だから……だから、私を忘れないで……」
 こう告げた時のアクアブルーの瞳には、力強い光が宿っていた。強い意思の
光──それに、ウォルスは彼なりの方法で応えていた。偽りなき誓いを意味す
る宣誓のカードを魔力複写し、それを二つに割って、一方をニーナに渡したの
だ。そのカードが、再会を導く事を祈って……。

「……あれ?」
 ランディが前方に見覚えのある人影を見つけたのは、ウォルスの回想が一区
切りするのとほぼ同時だった。前方の別れ道の所に、黒一色を身に着けた人影
が見えるのだ。
「……ウォルス、あれ……」
 恐る恐る問いかけた時には、ウォルスもその姿に気づいて、あいつだな、と
呟いていた。ただ一人、状況を把握していないファリアだけはきょとん、とし
ながらそんな二人を見つめている。
「……ね、どしたの?」
 ファリアがその疑問をそのまま投げかけるのとほぼ同時に、
「いようっ! やぁーっぱり、この道を通ったかぁ」
 黒い人影が声をかけてきた。覚えのある声と独特の軽いノリに、ランディと
ウォルスはやれやれ、とため息をつく。予想通りと言うか何と言うか、三人を
待っていたのはスラッシュだったのだ。
「スラッシュ! 何でここに?」
「ん、まぁ、色々とあってな。お前さんたちにご同道させてもらおっかな〜、
とか思って、待ってた」
「……また、宮仕えとやらのためか?」
 相変わらず軽い調子でスラッシュが言うと、早速ウォルスが皮肉っぽい問い
を投げかける。
「ま、それもあるけど……お前らって、見てて面白いからさ。それに、ま、何
だ。冒険のパーティには、やっぱ鍵開け罠外しの技術者が必要だろ? オレ、
けっこーそーゆーの得意だから、邪魔にはなんねーぜ?」
 にこにこと笑いながら言う、そのマイペースぶりに、ランディは内心舌を巻
いていた。しかし、スラッシュの言う事にも一理ある。ランディは傍らのファ
リアとウォルスを見やり、反対意見がない事を確認すると、了解の意図を伝え
ようと口を開くが、
「あーっ! お兄ちゃん、やあっと、みぃっつけたぁ!」
 突然のはしゃぎ声にぎょっとして背後を振り返る羽目になった。振り返った
先には、目をキラキラさせたくるみ色の髪の少女が立っている。その視線の先
にあるのは……額に手を当てたウォルスだ。
「っとに……何でここで、お前が出てくるんだ、レイチェルっ!?」
 ほとほと疲れ果てた、と言わんばかりの問いに、レイチェルはむう、と不満
げに頬を膨らませた。
「なぁんでいっつもそうなのよぉ、お兄ちゃんはぁ! あたしがいーっしょけ
んめ捜してるのに、ぜんっぜんわかってくれないんだからぁ、もう!」
「だから、オレは別に、捜してくれとは頼んでいない! ったく……」
「あ……あのさ……」
 苛立たしげな様子で頭を掻くウォルスを、ランディは遠慮がちにつついて注
意を喚起する。振り返ったウォルスに、ランディは乾いた声で知り合い? と
問いかけた。
「ああ……レイチェル・マーリル……オレの、従姉妹だ」
 問いに素っ気なく答えると、ウォルスはレイチェルに向き直る。
「とにかくだな……」
「とにかくもなぁんにも、なぁーいのっ! あたしはお兄ちゃんと一緒に行く
からね、誰が何て言っても絶対絶対、ぜぇーったい! ついて行くよ!」
 言いかけた言葉を遮って、レイチェルは早口にこうまくし立てる。その様子
に説得は不可能、と悟ったウォルスは、勝手にしろ! と言いつつレイチェル
に背を向けた。そうすると、必然的に楽しげにニヤついているスラッシュと目
が合う。
「いや〜あ、お兄さんってば、モッテモテだねぇ♪」
「……人の不幸を楽しむなっ!」
「えー、別に楽しんでなんかなぁいって♪ 面白がってるだけさ〜♪」
 どこまでもどこまでも、スラッシュは飄々としたペースを崩さない。その様
子に半ば呆れ、半ば感心しつつ、ランディはやれやれ、とため息をついて空を
見上げた。青い空は高く、遠く広がり、彼らに早く先に進むよう、語りかけて
いるようにも見えた。
 ランディはしばしその色彩を見つめ──それから、仲間たちを見回して、言
った。
「……さ、行こうか!」

 そして──旅人たちは道を歩き始める。

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