翡翠の追憶 12

 ……それから、どうなったのかと言うと。
 事態には、わりあい呆気なく、決着がついた。

 一連の騒動の原因が、古い在り方にこだわり過ぎた長にある事。
 ぼくがずっと女装を強要されていた事。
 ぼくがそうしなければ村から追い出すと母が脅迫までされていた事。
 みんなの信頼の厚い古老からそれが丁寧に説明された事で、村人たちは落ち
着いたらしい。

 ……脅迫されていた、というのには驚いたけど、でも、それとわかれば姉の
あの過敏反応にも納得は行く。

 ぼくが暴走させた風の刃は、幸いにというか、死者を出すには至らなかった
らしいけど。
 ……正直、この一件は堪えた。
 感情の制御を誤ると、それだけで人を殺しかねない自分。
 落ち着きを持たなきゃいけないと、それで痛感したものだった。

「だからって、押さえこみ過ぎはダメなんだからな」

 落ち込むぼくに、ジェイドはこう言ってくれたけど、ね……。

 ……この一件のあと、ジェイドは『消えて』しまった。
 元々、ジェイドは形のない、風そのものと言える存在で……。
 ぼくの力の引き寄せられ、ぼくの力を取り込む事で、実体を得たと言ってた。
 でも、ぼくが暴走させた風を鎮めるために力を使い過ぎたから、また風に還
らなきゃならないんだって。

 ……微熱に浮かされた状態で聞いた話だから、はっきりとは覚えていない。
 そして、その辺りの事をはっきり確かめる時間はなかった。

 何故なら……二人だけで一緒に過ごした夜が明けた時、ジェイドの姿はどこ
にもなかったから。
 同じ名前の澄んだ石を一つ残して、全て、『消えて』しまっていたから……。


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