翡翠の追憶 8

「……男の声……巫女様が……」
 どんな目的で来たのかわからないけど、とにかく何の前触れもなくそこに現
れた村人は呆然とこう呟いた。
「……っ! お前っ……」
 ジェイドがはっとしたように声を上げると、
「……巫女が……巫女が……た、大変だあっ!!」
 それに弾かれるように、彼は村へと走り出した。
「まじいっ!」
 慌ててジェイドがその後を追うけど追いつく事はできず、村人はわめき散ら
しながら村の方へ姿を消した。
「……」
 ぼくはと言えば、どうすればいいのかわからなくて立ち尽くすだけ。
「やっば……」
 ジェイドが呆然と呟いた時、
「……知られてしまったの?」
 静かな声が、背後から聞こえた。振り返った先には寂しげな母と、呆然とし
た姉の姿。
「……えっと……」
「バレちゃったの?」
「……みたいだ」
「いつまでも隠せる事じゃないだろっ!!」
 姉の問いにぼくは呆然と呟き、それに続けてジェイドが吐き捨てた。
「あ……あんたがっ! あんたが、ヘンなとこでラキを呼びとめるからっ!」
「そういう問題じゃないだろっての!」
「そう言う問題よっ! どうしてくれるのよ、あたしたちの生活っ!!」
「いい加減、自分のことだけ考えるの止めろってのに! どいつもこいつも、
自分の都合しか言いやしないで!!」
 苛立たしげにジェイドが叫んだ、その時。

 村の方から、人々のざわめきが聞こえてきた。

 ……そのざわめきは悪夢の到来……いや。
 悪夢がその形を最悪のものへと変えて行く、予兆を思わせた。


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