翡翠の追憶 7

「ラキィ」
 家を出て少し進むと、呼びかける声が聞こえた。この呼び方をするのは一人
だけだから、そこに誰がいるのかは容易に察する事ができる。
「……ジェイド?」
 できるだけ小さな声で名を呼びつつ振り返ると、翡翠色の瞳がじっとこちら
を見つめていた。
「……何で、そうまでしなきゃなんないんだよ、お前が?」
「何でって……ぼくしかできないんなら、仕方ないし」
「そういう問題じゃないだろっ!」
 つい、諦めたような口調になって答えると、ジェイドは苛立たしげに声を荒
げた。
「何で、そうなんだよ?」
「……え?」
「いつも、そうやって、一人で考えて、一人で決めて」
「だって、自分の事だし」
 自分で考えるのは、当然だよ?
 そう言って笑うと、ジェイドはきっとこちらを睨みつけてきた。
 鋭い視線に、思わず足が後ろに下がる。
「何で、そうやって……お前は独りで背負い込み過ぎなんだよ!」
「ジェイド……」
 どう言えばいいのかわからなくなって、名前を呼んだ時。

 がさり、と音を立てて近くの茂みが揺れた。

「……え?」
 突然の事にとぼけた声を上げてそちらを見ると、そこには。

「……」
 魂の抜けたような顔付きの、村の人が立っていた。

 声を聞かれた。
 それはすぐにわかった。
 だけど。

 それが導く事態までは、その時にはまだ、思い至らなかった……。


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