翡翠の追憶 4

 その発端は、いわゆる成長と言うモノ。
 生来華奢なぼくではあるけれど、さすがに十五、六歳ともなれば男性的な成
長が進む。
 最大の問題は、声変わりだった。
「……もう、限界です」
 ぼくが声変わりをしたあと、母は訪ねてきた長に向かって低く、こう言った。
「これ以上は、巫女として……女性として振る舞うのは、無理です」
「だが、それでは今後、誰が祭祀を取り仕切ると言うのだ?」
「他にも、力のある娘はいるのでしょう?」
「しかし……」
「あの子は今、体調を崩していますし。ひとまず代役をたてて、その中から適
した者を選ぶ事はできぬのですか?」
「……だが、それでは守りの力が、弱まる」
 ラキス以上に力のある者は、いないのだと、長は言いきった。
 最も力ある者が祭祀を司らねば、守りの力は得られないのだと。

 ……正しいような、でも、どこか歪んでいるような……奇妙な理屈。

「……っとに、好き勝手言ってるし!」
 母と長との会話を壁越しに聞きつつ、ジェイドは苛立たしげにこう吐き捨て
た。対するぼくは、答える気力もなく、ただ息を吐くだけ。
 ここ数日……というか、声が変わってからというもの、ずっと熱が下がらな
い。
 まるで、外に出ることを何かが阻んでいるみたいだった。
 ジェイドは、そんなぼくにほぼつきっきりで看病をしてくれてた。
 母たちは、畑の仕事があるから、代わりに看ている、と言って、一体何日こ
こにいるんだろう?
 ……なんかもう……よく、わかんないや。

 ただ、ジェイドがいてくれる事で、だいぶ気持ちは楽だった。

 そう……他の誰が一緒にいるよりも。


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