翡翠の追憶 14 「……ラキィ!」 甲高い声が、ぼくを物思いから現実へと呼び戻す。 振り返ると、白くて柔らかなものが、肩にふわりと舞い降りた。 「……ああ、スカイアくんかぁ」 飛んできたのは、スカイアくん。真っ白な羽に包まれた、現在の我が相棒。 ……何度教えても、『ラキス』とは発音できないらしく、いつの間にかこの 子はぼくを『ラキィ』、と呼ぶのが当たり前になっていた。 「ラキィ、おやつの時間ッピ!」 ぱたぱたと羽ばたきながらの訴えに、ぼくは苦笑する。 「はいはい、お茶の準備しないとね……他の皆さんにも、声、かけてきてくれ る?」 「わかったッピ!」 笑いながら言うと、スカイアくんはふわりと飛びあがって母屋の方へと飛ん でいった。 ぼくは身体を伸ばしつつ……ふと、空を見上げる。 「……」 蒼い、静かな、空。 それは……とても穏やかに、ぼくを見守ってくれている。 空だけじゃなく、ここは人も、空気もとても優しい。 ふらりと旅立つつもりもあったけど、どうやら、このまま根を張る事になり そうな気はしていた。 「……いつか……」 小さく小さく、呟いてみる。 「いつか……変われるかな……」 ――変わらなきゃ、ダメだよ、ラキィは―― 呟きに、懐かしい声が応えたような気がして、ぼくは微かな笑みを浮かべる。 ……そうだよね。 風は変革を運ぶもの。 立ち止まり、停滞するものじゃない。 だから、少しずつでいいから……変わろうと思う。 今は、舞い降りたこの地の暖かい風を失わないために、できる事を模索する ので精一杯だけど。 ……いつか……変われるだけの何かに、出会えたら……。 その時は……。 空に向けて、手をかざし、そっと、流れていく風に触れてから。 ぼくは、ゆっくりと歩き出した。 |
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