翡翠の追憶 1

 風はまだ、冷たい。
 昼下がりとはいえ、外でぼんやりと本を読むには、ちょっと向かないかもし
れない。
 季節は、冬。暖かい風が吹くまでは、もう少し時間がかかりそうな気がする。
 ……もっとも、共に下宿生活をしている彼の許には、一足早い春の足音、も
とい、羽音が届いているようだけど。

 人と人が想いを通わせる事。
 それは、とても穏やかな風を導くもの。

 想いを通わせる……か。

 ふと、ため息がもれた。

 仮に、大切と思える人と、この地で巡り会ったとして。
 はたして、ぼくは彼のように行動できるだろうか?
 想いを伝える事ができるだろうか?

 ……恐らくは、否。
 囚われるものが多すぎる今のぼくには、そこまでの勇気を持つ事はできない。

「……それじゃダメだって、キミは言うだろうけどね……ジェイド」

 苦笑しつつ、そっと、首からかけた翡翠のペンダントを握り締める。

 ……キミは今、どこにいるんだろうね……?


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