薔薇の下国59村のプロロにて使われた、役職説明を兼ねた 詩人の歌。 #hr 何れの地より彼らが来るか。 何れの刻より彼らが在るか。 それ知る者は世にはなく。 ただ、伝わりしは幻燈歌。 朱に染まりし月の映すゆめ。 始まり兆すは紅の舞い。 絡み合いしは、縁の糸。 呼び集められしは、いとし子たち。 月の、神の、愛でし子ら。 月のいとし子は牙の主。 鋭き爪と、牙持て引き裂く夜の獣。 人でありながら人でなく。 内に獣を秘めし者。 他者の血肉を渇望し。 その思いのままに、夜を駆ける。 月に対するは、神のいとし子。 蒼と朱、ふた色の花。 対なる双花を身に帯びし、『双花聖痕』。 彼らは象徴。彼らは導。 力なき者を導く使命を帯びし、神の御子。 されど、甘美なるその花は。 時に強く、激しく、月の牙を引き寄せる。 双花支えしは見出す者たち。 神より授かりし力持て。 闇に潜みし、月のいとし子たちを見出さん。 一つの力は生ある者を。 一つの力は死せる者を。 それぞれ見極め、導となさん。 光なるものと闇なるもの。 狭間に揺らぐは影の護り手。 一つは光。 闇より迫る牙退けしもの。 一つは闇。 闇に潜む牙を護り、生かさんとするもの。 二つの護り手。対ならざる対なす者たち。 その存在は、合わせ鏡の如きもの。 月のいとし子、神のいとし子。 力ある者を巡る者たち。 力無きが故に弱く。 力無きが故に強く。 朱の月の彩る世界の内で。 何を求め、何を信じる……? 月巡り、刻巡り、『場』が築かれしとき。 選びうるは、生か死か。 生の望みは、他者の死を持ってのみ叶うもの。 死をもたらすは、月の牙か、人の刃か。 何れなろうと、死せる者は。 囚われ、ただ、行く末を見届けるのみ。 泡沫酔夢、夢幻の如く。 紡がれ行くは、物語。 月のいとし子、神のいとし子。 縁重なり、想い重なり。 描く未来は、如何なるものか。 語り継がれし物語。 水面に映るは、朱の幻燈……。