ねこのきもち

 ぼくらはいつも一緒だった。 
 捨てられて、道端で鳴いていたぼくをアルがみつけてくれた時から。 

「さてと、また遠出するよ〜、にぃ君」 
 勤め先から戻ってきたアルは、いつもと同じくたくさんの紙束をリュックに
詰めながらこう言った。 
 アルのお仕事は行商人。 
 と、言っても個人でやってるわけじゃなくて、おっきな協会に所属して、そ
の指示であちこちを歩き回っている。そのついでに、自分の商品のお酒も売り
歩いて、お金をためてるんだけど。 
 その時も、いつもと変わらない出発で、ぼくらはいつも通り、この小さな下
宿屋さんに戻ってこれる……。 

 そう、思っていたのに。 

 村について、それを見た時、全身の毛が逆立った。 

『やぁこんばんワ! 僕チャーリーだヨ!』 

 陽気な声で喋る、フシギなモノ。 
 ヒトのカタチをしてるけど、ヒトじゃないそれ。 

 こわい。 
 あぶない。 

 直感的にそう思ったから、アルにそれを伝えようとした。 
 けど……。 

「わあ……お話しする人形さんですかぁ」 

 アルは村の他の人と同じように、素直に驚くだけ。 
 ぼくが声を上げても、気づいてくれなくて。 

 もどかしい。 
 コトバが伝わらない事が。 
 アル、アル、危ないよ、早くここから離れようよ。 
 一生懸命訴えたけど、届かなかった。 

『アレレ、黒いネコちゃん、ご機嫌ナナメ?』 
「……あはは、きっと驚いてるんですよ〜」 

 毛を逆立ててると、フシギなモノが近づいてきた。 
 とっさに睨み付けた瞬間、何か……。 


 コトバで表せないモノが、見えた気がした。 


 ……それから、ぼくとアルは騒動に巻き込まれて。 
 アルはなんにもしてないのに、殺される事が決まった。 

 それでも……ぼくらは一緒だよ、アル。 
 いつまでも、ずーっと……。

 ☆言い訳

 なんとなくノリと勢いだけで書いてしまったにぃ君ネタでしたが、予想以上
にダメージを振りまいてしまったような気がしなくもなくー(汗)。
 いやほんと、他意はなかったんですよー!?
 しかしにぃ君……チャーリーの影に完全に埋没してたけど、結構見てる人は
見てくれてた……のかなぁ……(トオイメ)。
 でも、アルが狼だったら、中身は一体なんだったのやら(汗)。


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