月下の嘆息

 村はずれの丘の上で、オレは一人で座り込んでいた。
 突如村に現れた異形の存在、人狼。
 村はずっとその事で大騒ぎになっている。
 人狼を見抜く力のある占い師が二人名乗りを上げ、その二人による事情聴集
に旅人のニコラスが応じ、無罪と判定されたのが今朝。
 それと共に、パン屋の『居眠り店長』ゲルトが人狼の牙にかかり、村は騒然
となった。
 その対策会議が終わったのはついさっき。
 今夜、村長に対する聴集が行われ、そして、明日の朝。
 パン屋のバイト店員だったオットーが、殺人の容疑者として処刑される事が
決まった。
 昼間にちょっと無理をしたせいで、体調が悪かった事を理由に会議から早々
に抜け出してきたオレは一人で夜空を見上げていた。
 ちょくちょくつるんでいた、遊び仲間が処刑される。
 直前まで、それはオレの運命だったはずなのに。
 みんなは、オレがその事にショックを受けているとでも思ったらしく、会議
を抜けると言っても特にとがめられる事はなかった。

 月を、見上げる。
 ……これから自分がしようとしている事に、不安と恐怖、そして……高揚感
を覚えながら。

 何で、こんな事になったんだろう?

 問うた所で、誰も答えてなんてくれないけど、問わずにいられない。

 確かに力は欲しかった。
 何の取り柄もないオレだけど、ずっと想ってきたあの人を守りたかったから。
 そして、今まで気づく事はなかったけど、オレは力を持っていた。

 ……できれば、ずっと、気づかずにいたかったけど……。

 目覚めてしまった血は、止められない。

「……くっ……」

 月の光が、身体を疼かせる。
 血が騒いで仕方がない。

 いつからか、受け継がれていた、妖かしの血。それは唐突に目覚め、ヒトを
殺めた。
 言いようもないヨロコビと、恐怖を残して。

 確かに力は欲しかったよ。
 でも、オレが望んでいたのは、本当にこんなモノなのか?
 問いかけても、答えはでない。
 そして、月のヒカリは、眠れる血を騒がせる。

『……Viento、聞こえる? そろそろ、時間』

 不意に、意識に声が届いた。
 ああ……わかってるから、nube。
 ちゃんとオレも行くよ……あの子を喰らいにね。

 純白の魂を共有する者の一人。
 村の命運を背負おうとする幼い少女が、その標的。

「……」

 月を、見上げる。

 オレはいつか、この衝動のままに、あの人を手にかけるんだろうか?
 ずっと想って、そして、今でも想い続けている人を。
 昨夜のように、笑いながら、切り刻める?

「……そうなる前に……」

 もしも、この世界に神がいるのなら。

「………………」

 声に出さずに、願いを呟いて。
 月の導く衝動に、身をゆだねた。

 ……そして、紅い月が大地を染める夜が来る……

 ☆言い訳

 参加二回目、初狼時のヨアが元ネタですが……。
 あの時のプレイ展開は、こんなにシリアスじゃなーいっ! つか、展開的に
鑑みて処刑組は死んでないんじゃないのか(笑)。つまり、襲撃しても強制収
監するだけだっんじゃ?(参加中はここ全然気にしてなかったり)
 妙に美化してしまいましたが、みんなにイロイロなトコが薄い、黒い、いや
白い、でも黒い、と可愛がられた(?)ヘタレでした、D686のヨアは。
 詳細はログを見てもらった方が早いですが、かーなーり、脚色してますよコ
レw
 ちなみにViento、nubeというのは、この時のCNをスペイン語にしたものです
が。翻訳サイト任せなので、間違ってるかもしれないです。

 えーと、実はF137の創作大会に触発されてがっと書いてしまいました〜。
 ヨアヒムファンの皆様、ホントに申し訳ないです……orz

 ちなみに、最後になんと呟いていたかはご想像にお任せ、という事でw
 願いが叶ったかどうかと言えば……まあ、ログを見ればわかるでしょう。

 んでは、ヨアファンの皆様に襲撃される前に、自分吊りを決定しますorz
 【本決定:▼tasuku】



BACK