Kleiner Vogel des Lichtes きらきらと、夜目にも鮮やかな光が、木陰に揺れている。 それは、多分、本来の輝きに比べれば、格段に弱々しいものではあったろう けれど。 「しかしまあ、聖なる鳥ってだけのことはあるよな」 呟いて、ハーヴェイは、振り返る。 「で、泣かしていいの?」 その視線を受け、透き通った身体でふわりと宙に浮かんだ美しい女性は、こっ くりと頷いた。 彼女の返答に軽く肩をすくめ、とん、と地を蹴ると、ハーヴェイは狐の姿に 戻る。 人の姿のまま、霊力を使うことは、まだ出来ない。 父は、「力の意味」を見いだせば、いかなる状況でも力は使えると言うが、 何がその「意味」なのか、彼にはさっぱり理解出来ていなかった。 「それにしても、あんたも変わった人間だな」 音を立てずに、庭を横切りながら、今は、先導するように前を行く女性の霊 体に声をかける。 「異種の小鳥が心配だからって、現世に留まるなんてさ。ふつ−の幽霊のやる こっちゃねえぞ」 彼女は答えず、ただふわりと微笑んだ気配だけが伝わってくる。 儚げで優しい気配…この気配そのものが「殺された人間」の霊体としては、 格段に変わっていた。 罪無く命を奪われた人間の魂というものは、普通もう少し、恨みや哀しみの 気配を纏っているものだ。 ところが、彼女の抱えている心残りというのは、どうやら、目の前で心を閉 ざして震えている雛鳥の、行く末だけのようで… 「まあ、アーちゃんも心配してたし、いいんだけどよ」 呟いた自分の言葉の方が、何だか言い訳じみていて、内心で苦笑した。 「ほんとに、泣かすからな?」 目的の木の下に着くと、もう一度念押ししてから、ハーヴェイは、可能な限 りの数と色彩の狐火を上空に放った。 頭上の枝の間でうずくまっている小鳥の魂が無意識に放つ輝きに、狐火の光 が戯れるように乱舞する。 『へえ、やっぱ綺麗だ…』 素直に抱いてしまった感想は、恥ずかしいので口にしなかったが、 (綺麗ね、とても…) 今まで殆ど声を出さなかった彼女が、まるで心を読み取ったかのように、う っとりと呟いた。 *********************************** 「う……ひくっ……わあああああああっ!」 堰を切ったように、声を上げて泣き出した小鳥…ラッセルを見つめ、ぽふぽ ふと尻尾でその頭を撫で続ける。 (これでいいのか?) と、視線を向けると、彼女は、今や、月の光を掠れさせるほどに輝きを増し た光の小鳥のオーラに溶けるように消えていくところだった。 (ラッセルを、よろしくね。狐さん) なんだか最後に、とてつもなく、あっさりと心残りの続きを託されたような 気がするが、今更なので、気にするのはやめにした。 どうせ、このまま放っておけはしないということは、既に自覚済みだったので。 やがて、泣き疲れて眠ってしまった小鳥のそばに、寄り添うように寝そべって、 「ん〜、とりあえず、もう二〜三べんは泣かさないとな」 今度は湖にでも突き落として脅かしてみようかな?などと、少々物騒な計画 を立てつつ、くわあ、と欠伸を漏らし、銀の狐は目を閉じる。 (そのうち…笑うかなあ…?) 眠りに落ちる寸前に浮かんだ想いは、その夜の夢に溶けていった。 |