[[蒼天輪舞]]
#navi(村関連SS置き場)
澪氷の騎竜師 ルートヴィヒ
─大会終了後 騒動の翌日─
[ルートヴィヒは結界により閉ざされた医務室の個室で目を覚ます。
それは個室から誰かが出て行く気配を感じた直後。
血が足りず動かない身体、四肢をベッドに投げだした状態のまま、短い溜息をついた]
───……どうあっても責任逃れをするつもりですか。
あの人のやりそうなことです。
[呟くのはエーヴァルトが告げて行った言葉について。
父が申し立てた内容に聞き覚えは無いが、事実ではあるのだろう。
ラーベンタール側の目的は一切聞きはしなかった。
ただ、リヒャルトとの利害が一致したために共謀しただけ。
だからエーヴァルトが告げて行った言葉が真実かどうかは知らない。
けれど、父の失脚は自分の望みでもあった]
……リオ。
貴方は家の、ラーベンタール家の存続を願いますか?
願うのであれば、全てを私に委ねて下さい。
[隣のベッドに居るであろうリヒャルトに声をかける。
その返答がどうあれ、自分のやるべきことは決まっていた]
#hr
精霊師 リヒャルト
― 大会終了の翌日 ―
[ジークムントの口から紡がれる呪。
腕が切断される、鈍い衝撃。
動けぬ体で、ぼんやりとその時のことを思い返していたら、
個室の扉が開き、入ってくる者がいた。]
エーヴァルトさん…。
[神官に付き添われ、精霊術の拘束を受けている執事の姿に、
彼もまた、共犯として捕らえられたのだと理解する。
エーヴァルトが語る言葉は、さして驚きをもたらすものでもなかった。
ラーベンタール家が宝珠を狙ったことは、遅かれ早かれ暴露される。
そう、思っていたから。]
………。
[こちらを向いたエーヴァルトの視線に、小さく頷きを返す。
エルデシュタイン卿の申し立てに、思うところはあれど、
否定するつもりはない。]
ルーイさま。
[エーヴァルトが去った後、
傍らのひとが目覚めた気配に、どうにか体を起こし、そちらを見る。
問われる言葉には、ゆるりと首を傾げた。]
僕の望みは、あなたと共にあることです。
家は―――碌でもない人達ですが、
竜の谷を管理する者がいなくなれば、皆が困るでしょうね。
[自分は、その任に戻る気は無いと、暗に告げて、しっかりと頷く。]
全て、ルーイさまの思うようになさってください。
僕は、それをお助けするだけです。
[結局は、それが全てだった。]
#hr
澪氷の騎竜師 ルートヴィヒ
─大会終了後 騒動の翌日─
[リヒャルトの言葉を聞いて、小さく口許を緩めた]
そう、ですか。
[薄紫眼を閉じながら、告げられた言葉と想いをしっかりと受け止める。
竜の谷の管理についても同意を向けて、再び開いた薄紫眼をリヒャルトへと向けた]
では、査問の時は私の話に合わせて下さい。
私の身を以って、父を貶めます。
[もうエルデシュタインの家へ戻る心算は無い。
こちらもその想いを載せてリヒャルトへと告げ。
全ての罪は自分が被る旨を説明した後、その時はそのまま眠りへとついた。
一刻も早く神殿からの査問を受けられるよう、体力を戻すために]
#hr
澪氷の騎竜師 ルートヴィヒ
─大会終了数日後─
[査問に耐え得る体力が戻った頃。
ジークムントの病院へ転院する前を見計らって、神殿から査問官が数名やって来た。
起きた事態が事態と言うことで、ローゼンハイムも同席している]
「────以上のように貴公の父、ゲーフェンバルト=エルデシュタイン卿からの申し立てがあるが、相違無いか?」
[薄紫眼を閉じたまま、上体を起こした体勢で査問官の読み上げる父の申し立ての内容を耳にして。
問われると呼吸を整えるように息を吐いた]
──…違います。
私は利用されたのではありません。
今回のことの計画及び実行はこの私、ルートヴィヒ───。
───いえ、ローデンライヒ=エルデシュタインが行ったものです。
[名を紡ぐ時、弟の名ではなく自分の本当の名を名乗った。
これは前日にリヒャルトへ説明した時にも明かしていないこと。
これを明かすことは、体力を戻す間に考えて出した結論だった。
ルートヴィヒ──否、ローデンライヒの発言に査問官達が俄かにざわめく。
ローゼンハイム達も驚きの表情をしていたことだろう。
何故なら、エルデシュタイン家にローデンライヒと言う名を持つ者は存在しないのだから。
薄紫眼を瞼から覗かせると、査問官を真っ直ぐ見詰める]
私が今回『聖宝』を狙った理由をお話します。
少々長くなりますが───。
[そう言って、『聖宝』を狙った理由として今まで父が隠してきた自分についてのことの一部を打ち明けた。
自分が最初は双子であったこと。
生まれた子が双子であることを厭うた父が、物心ついた頃に自分達を辺境のジャングルへ置き去りにし、生き残った方だけ呼び戻すことにしたこと。
それが4年続き、終には弟がジャングルで死亡してしまったこと。
死亡した弟の方がルートヴィヒであり、その名で生活するよう強いられたこと。
細かいところは説明しなかったが、父の非人道的な行いを強調して居る者達に聞かせた]
……幼い頃は再び捨てられる恐怖に怯え我慢して来たのですが、もう我慢の限界でした。
自分の名を奪われ、死した弟の名を押し付けられて。
弟が在るべきだった立場を奪ってしまったように思え、罪悪感すら覚えました。
そんな状態にもう耐えられなかったのです。
だから、私は父を失脚させるためにこの計画を立案しました。
私がこのような行動を起こせば、家全体に責任が降りかかるでしょうからね。
『聖宝』を狙うことにしたのは、重罪であるほど父の失脚の可能性を上げられると思ったからです。
『聖宝』を手に入れたら、全ての罪を父に被せ逃げる心算でした。
[感情を押し殺して淡々と言葉を続ける。
査問官に告げた理由に嘘は無い。
けれど、その中に弟を生き返らせようとしたと言う目的は含めなかった。
これはリヒャルトにもまだはっきりと明かしていなかったことだし、何より禁忌とされる願いであったために。
今後も諦めずに弟を生き返らせる方法を模索するには、明かさぬ方が得策と考えた]
───以上が今回の騒動の真実です。
ラーベンタール卿が画策したものではありません。
私が考え、私を慕ってくれていたリヒャルトを唆し行ったことです。
[全ての罪は自身に、エルデシュタイン家にあると証言し、ローデンライヒへの査問は終了した。
次いでリヒャルトへの査問が始まり、ローデンライヒは静かにそれが終わるのを待つ。
長く説明を続けたために疲れの色が現れていたが、査問が終わるまでは気力で耐え続けていた]
#hr
精霊師 リヒャルト
― エーヴァルトが去った後>>4 ―
[全ての罪を自分が被る。
そう告げるルートヴィヒへ静かに一礼し、彼が眠るのを待って、暫し思索に耽る。
その後、診療に訪れたジークムントに、出来るならばラーベンタール家へ言伝を頼みたいと頭を下げた。]
ルートヴィヒ様が宝珠を強奪するのをお止め出来ませんでした。
このままでは、エルデシュタイン家の失脚も免れないかと思います。
役目を果たせず、申し訳ありませんでした。
かくなる上はかねてよりの約束通り、音の精霊を兄にお返しして、
ルートヴィヒ様と共に罰を受けたいと思います。
今まで、ありがとうございました。
[許されるならば口頭で言伝の内容を告げて、お願いしますともう一度頭を下げる。
伝えられずとも仕方はないが、もし言伝が届いたならば、これだけで父はほとんどを理解するだろう。
ルートヴィヒに従うと決めた以上、ラーベンタール家に累が及ぶのは、避ける心算だった。
無論、それだけのつもりはなく―――]
#hr
― 査問の日 ―
[ルートヴィヒがある程度回復するのを待って、査問が行われる。
その頃には立てるほどに回復していた精霊師も、また後ろに控えて、
査問官の言葉とそれに応えるルートヴィヒの言葉を聞いていた。]
――――――…。
[一度だけ。主がローデンライヒと名乗ったその時だけ、天青の瞳を瞬かせて主を見る。
だが、口を開くことはなく、すぐに瞼を閉じて、その声に聞き入った。]
…………。
[初めて明かされるルートヴィヒの、いや、ローデンライヒの過去。
その壮絶さと、結果、刻まれたのだろう傷を思い浮かべて、密かに息を吐く。
やがて、主の査問が終わり自分の番になれば、査問官の前へと進み出た。]
[エルデシュタイン卿の申し立てを再度聞かされ、
その内容を認めるかと問われて、明確に否定する。]
いいえ。
それはおそらく、エルデシュタイン卿の事実誤認でしょう。
意図的なものかどうかはさておき。
[うっすらと笑みを浮かべて、周囲の者を順に見遣った。]
僕は、ルートヴィヒ様から―――いえ、ローデンライヒ様から
聖宝奪取の計画を打ち明けられました。
その事実を以てエルデシュタイン卿への復讐を為す、
ということはお聞きしていましたし、聖宝の力を手に入れれば、
僕の不安定な立場も解消出来る、と、ローデンライヒ様は仰ってくださいました。
ですが、理由などどうでも良かったのです。
僕は、あの日、あの時から、この方のために生きていこうと決めていましたから。
[さらりと涼しい顔で言い切ってから、少し肩を落とす。]
ですが、どういう経緯か、ローデンライヒ様から計画を打ち明けて頂いてから
数日後には、父がそれを感づいておりました。
いえ、不思議では無いでしょう。父も精霊師ですし―――
……なにより、実の親ですからね。
父は私に、ローデンライヒ様をお止めせよと命じました。
そのような計画が実行されれば、成功しようと失敗しようと
エルデシュタイン家の失脚と没落は免れぬ、と。
そして僕に、お止め出来なければ、家督を継ぐことは許さぬ、
という条件を、僕に突きつけたのです。
[口から流れ出る言葉は、虚実が渾然一体としながらも淀みない。
精霊の助力はなくとも、言葉を紡ぐことこそが力の源であったから、
実に慣れたものだった。]
ですが、僕はお止めすることは出来なかった。
…機会ならいくらでもありました。
でも――ですが、僕は、たとえどのような結果になろうとも、
この方が望むのならば、そのお力になりたいと、そう思っておりましたから。
ですから、ローデンライヒ様が罪に問われるのであれば、
僕も同じだけの罪を負いたい、と思います。
[語り終えて、これで全てだというように頭を下げる。
だが顔を上げた後、それと…、と軽く付け加える調子で言葉を続けた。]
エルデシュタイン卿は、此度の計画を何も知らなかったような顔で
ラーベンタール家を告発していらっしゃいますが、本当にそうだったのでしょうか。
僕の父でさえ感づいていたことを、ローデンライヒ様の実の父君が
まったく感づいていらっしゃらないなんて…
……いえ、告発する気はありません。
けれども、知っていて、見ぬ振りをなさったと考えると納得いくことも多いですよね。
御子息の晴れ舞台だというのに領地に帰ったのは、巻きこまれぬため。
ラーベンタール家への告発がずいぶんと手回しよく行われたのも、
あらかじめ準備されていたとも考えられます。
エルデシュタイン家にとっても、ラーベンタールは目障りでしたでしょうからね。
いえ。若輩者の戯れ言です。お気になさらず。
[唇に薄く笑みを刷いて、表情を隠すように一礼し、
元の位置に戻ったあとは黙って主の側に控えていた。]
#hr
澪氷の騎竜師 ルートヴィヒ(ローデンライヒ)
─査問の日─
[リヒャルトが証言する最中、身体を起こしているのが辛くなり、壁へと背を預ける。
その体勢で査問官とのやり取りを聞き続けて。
同じだけの罪を負うと言う言葉に薄紫眼を瞼に隠した。
全ての罪は自分が被る心算だったのにと嘆息する反面、同じ道を歩もうとすることを嬉しく思う。
弟とは別の意味でリヒャルトは特別な人間だったために]
…私が、私達が為したことの重大さは重々承知しています。
罪から逃れようともがく心算はありません。
……ですが、父については、法的処分を願いたく思います。
たとえ父が今回のことを私が勝手に行ったことと証言しても、私達兄弟に対する仕打ちが消えたわけではありません。
父の考え、判断により弟が死んでいるのです。
人殺しを人の上に立たせのさばらせておく訳には行きません。
[リヒャルトへの査問が終わってから口にしたのは、別件で父を処罰して欲しいと言うもの。
自らの出自を明かしたのは、二重に罪を父へと被せ、確実に失脚させるためだった]
そんなことのために今回の騒動を、とお思いかもしれませんが、私を凶行に走らせるようなことを父はしたのです。
私は父を許すことが出来ません。
弟は、私の目の前で散って行ってしまったのですから───。
[薄紫眼を閉じたまま、眉根を寄せ眉尻を下げる。
ベッドの上の下半身にかけられたブランケットの上に載せていた両手に力が篭り。
握り締めた両手の下で、ブランケットが皺を作った]
[査問が終わり、ローデンライヒ達への刑罰については後程告知されると言うことになり。
査問官とローゼンハイムは事実確認のために医務室の個室を後にする。
ローデンライヒの父、ゲーフェンバルトについても調査の後に判断を下すことにしたようだった]
───リオ、ありがとうございます。
貴方のお陰で父への疑念は振りまかれました。
後は処罰が下るのを待つだけ…。
[査問官達が立ち去ってから、疲れたように息を吐き、リヒャルトへ礼を述べる。
顔色はあまり良くなく、これ以上起きているのはかなり辛そうな表情をしていた]
#hr
精霊師 リヒャルト
― 査問の後 ―
[査問官や神官長が去った後、
静けさの戻った部屋の空気に息を吐き出してから、
主の様子を見て、眉を下げる。]
どうか、もうお休みください。
無理をされては、お身体に障ります。
[横になるのに手を貸したくとも、それが出来ないもどかしさに目を伏せる。
それでも、ベッドの側に行って片膝をつき、敬愛する主の顔を見上げた。]
必ず、エルデシュタイン卿にも罰は下されましょう。
さもなくば、私が、どんな手を使っても相応の報いを受けさせてみせます。
ですから、いまは体を治すことだけをお考えください。
…お辛いようでしたら、誰か、人を呼びましょうか?
[扉の外には、回復魔術の使える治療師か誰かがいるはずだった。
呼んでこよう、と立ち上がりかけた足が止まる。
薄紫に視線を合わせ、一拍置いてから、深く頭を下げた。]
これまで、違う名で呼んでいたことをお許しください。
ローデンライヒ様――。
#hr
澪氷の騎竜師 ルートヴィヒ(ローデンライヒ)
─査問の後─
済みません…少々、休みますね。
[リヒャルトに促されて承諾の意を向ける。
ベッド傍でこちらを見上げて来る相手に心配かけぬよう柔らかく微笑んだ。
その顔が多少青ざめていたため、余計に心配させたかも知れない]
父が大人しく罪を償うとは思えませんが───。
罪に問われ捕える事が出来たなら、私の復讐は完遂します。
後はもう、彼らに託すしかありません…。
[自分が出来ることはした。
自分の過去の傷を晒すことで捕えるための材料を与えた。
後は結果を待つしかない。
どんな手を使ってもと言うリヒャルトには小さく笑むに留め、人を呼ぶと言う話には首を横に振る。
傷が痛むと言うよりは、心労的な部分が大きかった]
──リオ、貴方が謝ることではありません。
私も、貴方に打ち明けていなかったことなのですから…。
[視線が合い、紡がれる謝罪の言葉。
それに対しても首を横に振る。
そしてにこりと嬉しげに微笑んだ]
呼ばれ続けていたのが弟の名前だったとしても、貴方に愛称で呼ばれるのは嬉しかったのですよ。
私の周りには、そのように慕ってくれる者は少なかったですから…。
#hr
精霊師 リヒャルト
― 査問の後 ―
[血の気の失せた顔のまま微笑む主の姿に、胸が痛む。
それを悟られぬよう顔を伏せ、告げられる言葉に、ひとつひとつ頷いた。
その顔が、ぱっと上がる。]
ルーイさま……いえ、ローデンライヒさま。
僕も、あなたに可愛がって頂いて、嬉しかったんです。
こんな僕を助けて、守ってくれる人なんて、あの時までは誰もいなかった。
だから、あなたのお役に立ちたい…。
[頬を上気させ、思いを吐き出す。
そうして、にこりと笑みを浮かべた。]
また、なにか愛称を考えますね。
ローデンライヒ様ってお呼びするのは、やっぱり堅苦しくって。
[構いませんよね、と小首を傾げて、悪戯っぽく笑った。]
#hr
騎竜師 ルートヴィヒ(ローデンライヒ)
─査問の後─
───ありがとうございます、リオ。
貴方と出逢えて本当に良かった。
貴方は、私にも出来ることを与えてくれたのですから──。
[吐き出されたリヒャルトの想いを聞いて、柔らかく微笑む。
失った半身の代わりには出来ないけれど、補い支え合える者が居ることはローデンライヒにとってありがたいことだった]
愛称、ですか。
楽しみにしていますね。
リジーからはロディと呼ばれて居ましたけれど…。
[愛称を、と言って悪戯っぽく笑うリヒャルトに小さく笑み返す。
ロディ以外の愛称を考えてくれるのだろうかと思いながら、ローデンライヒはベッドへと身を沈めた]
…少し、休みます。
何かあれば、起こして下さい───。
[そう告げて薄紫眼を閉じると、直ぐに静かな寝息が聞こえ始める。
消耗は激しかったようで、しばらく起きる気配は*なさそうだ*]
#hr
精霊師 リヒャルト
― 査問の後 ―
ロディ、ですか。
[リジーが呼んでいたという愛称を口にして、首を少し傾ける。
リジーは本当のことを知っていたのかと思うと、うらやましくはあった。
騎竜師と飛竜の間にある深い絆は理解しているし、嫉妬するなんてことはないけれど]
―――やっぱり、僕だけの呼び名が欲しいです。
[無邪気に笑って言って、ベッドの傍らから立ち上がる。]
はい。おやすみなさい、ローデンライヒさま。
[目を閉じた主に頭を下げ、眠りの邪魔をせぬよう、そっと下がる。
部屋の灯りを落とした後は、自分のベッドに腰掛けて、ぼんやりと考え事を*していた*]
#navi(村関連SS置き場)