村関連SS置き場/蒼天輪舞/─大会終了後・牢屋

Last-modified: 2011-04-23 (土) 13:23:55

風精 ドロシー

― 牢屋 ―

[リヒャルトとローデンライヒとの会話のあと、こっそりと牢屋を覗く風精ひとり。
普通の人間には見えない姿で、そっと中に入りこみ、そうして目的の人物を見つけた。
どうせ見えていないだろうと、じーっとその様子を見詰めてみる。
それから、ちょっと頭を確かめて、角がないことを確認する。
風が動いてるのくらいわかったかもしれないけれど、そこは気にすることではない。少なくとも、ドロシー自身は。

結果として角がないこと、自分の前では出さないだろうという情報を信じ込む幼精は、ほっと一安心して、エーヴァルトから数歩離れたところで少女の姿を取った。]

エーヴァルト!
角ないのね、良かった!
食べない?
リヒャルトもローデンライヒも食べない?
雷落とさない?

あ、あとね、エディ痛いの痛いのめーよ!

[お見舞いや面会のはずなのに、まず一方的に言葉を重ねた。]


執事エーヴァルト

― 牢屋 ―

[取り調べが終わってしまうと、牢の中ではする事もない。手持ち無沙汰という状態に、余り慣れない男は、どこか途方に暮れた様子で、粗末な丸椅子に腰掛けて小さな窓の外の空を見つめていた。

その男の髪を微かな風が揺らしたのは一瞬、気配に目をやると、見知った風精の少女の姿が現れる]

ドロシー?

[何故ここに?という問いは、立て続けに重ねられた言葉の群れに押し流された]

角…?そういえば、前にもそんなことを言っていましたね…
食べるというと、何を…はい?雷?

[リヒャルトとローデンライヒ、という名と共に紡がれる不穏な台詞に、一瞬眉をひそめたものの、最後に出て来た名前と言葉の意味ははっきりしていて、そちらには、ああ、と頷いた]

エディさんにお怪我をさせた事は、本当に、すみませんでした。私がお詫びを言っていたと、出来ればドロシーからもお伝えして下さい。


風精 ドロシー

― 牢屋 ―

エーヴァルトは角を隠してるって聞いたの!
今はなくてよかったの!

[戸惑いなんて気にもしないのだった。
幼精は完全にほっとした様子である。]

ぼくらのこと食べちゃやーよ。
雷も落としちゃやーよ。
びりびりーってしちゃう!

[そんなものでは普通人間はすまないが、風精としてみればそんな程度。
それからエディへの言葉にこくこく、と頷いた。]

伝えるよ!
でも直接もいわなきゃめーよ!


執事エーヴァルト

― 牢屋 ―

なるほど…察する所、そのお話の出所はリヒャルトですね?

[「様」が抜けてるのは、この男にとっても、いい加減ストレスが溜まっている証だろう]

私が角を生やして、雷を落とすと言っていましたか?ふむ、食べられちゃうかもしれない、と脅されたんですね?悪い人ですねえ。

[にっこりと微笑む]

安心して下さい。私に角などありませんよ。もしあっても、ドロシーのような良い子には、絶対に雷など落としたりしませんからね。もちろん食べたりもしません。
食べるなら美味しいお菓子の方がずっといいに決まっていますからね。

[お菓子の例えは、これが一番判りやすいだろうと思ってのこと。そして、エディについての意見には、苦笑を漏らす]

…直接お伝えする機会があれば良いのですが。恐らく、私はこのまま追放になりますから、無理かもしれません。
それに、エディさんもラヴィさんも、今更私の顔など見たくないのではないですかねえ。楽しい思い出とは言えないでしょうから。


風精 ドロシー

― 牢屋 ―

[出所を問われて、こて、と首を横に倒した。]

うん!
リヒャルトがねー、エーヴァルト角隠してるーって言ってたの!

[様抜けとか、風精は気にしなかった。
その時たとえリヒャルトが悪寒を感じていようとも、そんなこと知る由もない。
問われたので、素直に答えた。]

雷はねー、ぼっちゃ…、ローデンライヒに聞いたの!
リヒャルト悪い人じゃないよ、良い人よ?
……なんにもしない?

[素直に答えておいて、心配そうに尋ねた。
にっこりとした笑みに隠れた感情があったとしても、幼い精霊が気付くことはなく、とたんホッと息を吐くのであったが。]

ぼく、良い子よ! ずっと良い子!
もしあっても雷やーよ!

でもぼくも食べるならお菓子がいい!

[おんなじ、と笑顔になった。
そう思ってしまえば、今までの警戒なんてどこにもないわけで。
ピンクのうさぬいバッグから、飴を探ってはいっと手渡しするのだった。]

追放……?いなくなっちゃうの?

[それでも聞けばしゅんとして。
それから思いついた顔になって、一度手を打った。]

じゃあね、じゃあね、ぼくエディとラヴィ、エーヴァルトに会えるようにするよ!
エディもラヴィもね、優しいのよ。ぼくは大好き!
だからね、顔見たくないってないの。ないよ!
仲直り、大事!

[ぐっとこぶしをにぎって、力説する。
ね!なんて最後は笑って。]


執事エーヴァルト

― 牢屋 ―

[雷の話は、主の口から出たのだと聞くと、男はやれやれと溜め息を零した。]

ぼっちゃんに雷を落とした覚えなど無いのですがねえ。

[主従のけじめはつけてきたつもりだから、怖がられるのは心外だとばかりに首を振る。]

やはり、リヒャルト様の影響でしょうか。困ったものです。

[そして責任は思いっきり、飛ばしやすい方へと飛んでいった。ちなみに表情はあくまでもにこやかだ。]

ええ、良い性格ですからね、リヒャルト様は。何もしませんよー?

[風精を安心させるように継いだ言葉も、微妙にアレだが嘘ではない。]

私は、悪い事をしましたからね。皆さんにお怪我をさせてしまいましたし。
追放は仕方のないことなのですよ。

[しゅんとする様子には、瞳を和らげてそう告げるも、仲直りをという力説にまた困った顔になった]

いやその…無理はしなくていいんですよ?

[いきなり仲直りと言われても、向こうも困るんじゃないかとか思いつつ、笑顔に負けて反駁は控え目だ]


風精 ドロシー

― 牢屋 ―

[雷を落とせないものだと思っていたら、どうやら落とせるらしいと言葉で把握した様子。
びっくりした顔を一度はエーヴァルトに向けたけれど、自分には落とさないならいいか、と、うんうんと笑った。]

リヒャルトとローデンライヒ、仲良しね!
二人とも、良い人!

[良い性格なんていうのは、言葉の通り素直に受け取った。]

ねっ、なんもしちゃ、め!
ぼく、エーヴァルトすきー!

[しっかり安心しきった。勢いでぎゅうっと抱きついたりして。
それでも追放の話にはしょんぼりを隠せないのだった。]

エーヴァルトも良い人だもんー…
無理じゃないもん!
お願いしてみるんだもん!

[えいえいおー、みたいにこぶしを突き上げる。
それでもちょっと不安そうな顔になって、尋ねるのだった。]

……仲良し、やー?


執事エーヴァルト

― 牢屋 ―

確かに、御二人は仲良しですねえ。仲良し過ぎて、時々揃って暴走されますが。
それにしてもあなたの良い人の基準はどこなんでしょう?

[お菓子をくれた人とかなんだろうか?と思うと、ちょっと複雑だったが、抱きつかれれば、ぽふぽふとあやすように頭を撫でる。割と子守りには慣れてる執事だった]

エディさん達にお願いしてくださるんですか?

[張り切る風精に、くすと笑い声が漏れる。そして不安そうな顔には静かに首を振った]

いいえ、嫌ではありませんよ。でも、急がなくていいんです。

[優しく言ってから、懐から小さな包みを取り出す。カラメルで一口大のクッキーを包んだ甘い菓子が幾つか包まれたそれを、幼い風精に、飴ちゃんの御礼に、と、手渡した]

ありがとうございます。ドロシー。


風精 ドロシー

― 牢屋 ―

めー、って言われることするの?
ちゃんと見ておかないとだめね!
基準?
んー、んー、あったかいから!

[エーヴァルトの言葉にきょとんとする。
頭を撫でられてうれしげに、ごろごろと懐いているわけで。
理由はとてもよくわからないものであった。]

うんうん、お願いするの!
急がなくていいの? いつがいい?
ここにエディとラヴィ呼べばいいの?

[不思議そうに首をかしげる。
ちなみに牢屋という概念は、残念ながらないようだった。
何せ中にも普通に入り込めてしまうから。

いきなり出してくれたお菓子に、思わず目がきらきら輝くのは仕方のない話。]

いいの、いいの?
わーい、嬉しい♪
ぼくのほうこそ、ありがとうよ!

[ぴょんと軽く飛んで、頬にキス。
やっぱりそのあともぎゅうっと抱きつくのだった。]


執事エーヴァルト

― 牢屋 ―

ええ、ちゃんと見ておかないと、あぶなかしくて仕方有りません。

[ドロシーの言葉に、こくこくと思い切り頷いたのは、この時が初めてかもしれない。]

あったかい、ですか?本当に変わっていますね、あなたは。

[冷たいと言われた事なら山のようにあるが、この風精の感じ方は違うらしい。まあ、他より甘く接している自覚はあるのだが]

そうですね、ここはあまり居心地のいい場所ではありませんから、お客様を迎えるのは難しいんです。
もしも、追放される前にここから出して頂けたら、あなたにお菓子を預けますから、エディさん達に届けて、お詫びが言いたいと伝えてくれますか?

[どうにか、あまり唐突ではない話にしようと、そんな案を出して、頬にキスされた上に抱きつかれると、ゆるりと首を振った]

いいんですよ。あなたには、沢山助けて頂きましたからね。

[彼女自身に自覚は無いだろうが、事の最初から、最後に男を捕らえる側についてくれた事も含めて、男はこの風精に助けられたと思っている]

さあ、もう、お行きなさい。

[鉄格子のはまった、小さな窓の外の空を見上げ、抱きついた風精の腕をそっと解いた]

こんな閉ざされた場所は、あなたの居るべき所ではありません。

[風は、自由に空を駆けるものだから、と、男は笑った]


風精 ドロシー

― 牢屋 ―

エーヴァルトが見てるのね!
なら安心!

[にこにこと笑顔でいった。残念なことに対象二人の感情は知らないので、心底そう思っている。
かわっているというのには首を傾げた。]

う?
あったかいもんー

[それから、今度は逆側に首を倒した。やっぱりわからなかった。
場所のことを聞けば、牢屋の中を見回す。]

早く出られるといいのに。
うーんと、うーんと。
じゃあ、ぼくのこと呼んでね!
ぼく、すぐに来るよ。エーヴァルトのごめんなさいのためだもん!
ね、約束!

[にっこり笑顔で言い切った。
それから、助けて、というのには不思議そうな顔をするばかり。
まったくもって色々な自覚はないのだった。
が、促されると名残惜しそうにしながらも、そっと離れる。]

ぼく、自由よ、いつでも自由!
だからね、あんまり遅いとまた来るからね!

[そんな事を言われても彼にどうしようもないのだろうけれど。
子供はそれを知らないので、真剣に言うわけで。]

またね、エーヴァルト!
お菓子、ありがとうよ!

[何にせよそんな言葉を言うと、ふわっと金の髪が舞って、姿が消える。
エーヴァルトのまわりを風が一周したあとで、窓の外へと抜けてゆくのだった**]


執事エーヴァルト

[牢の中で執事が風を見送ってから数日後、神殿に移された男の焼いたドライフルーツたっぷりのシュトーレンが、熱風の騎竜師とそのパートナーの元に届けられた。]

[配達役を嬉々として引き受けた風精の伝言に、彼らが何と答えたか、そして執事と再び顔を合わせることがあったのか]

[それはまた、別のお話**]